糊塗日記

不定期更新。学生です。

「ニュートンの蕾」21話感想

「ニュートンの蕾」20話感想 - 糊塗日記

↑まえ

 

集英社公式アプリ少年ジャンプ+にて毎週火曜日更新の鳩がくわえたオリーブの葉「ニュートンの蕾」第21話さざ波とアステール(5)の感想を新世界・玉響しゆに敬意を払いつつ書いていく。今週は重すぎる。

読んでいて体調を崩しかけた。この作品に金を出してる集英社は別の使い道を考えた方が賢明だ。

f:id:tits-tits22:20190723212822p:image

読者の気持ちである

  • 絵のこと

描きやすい顔を描きやすい角度で描いているのがよく伝わってくる。それは既視感が頻繁に訪れるからだ。これによる問題は読者へのサービス精神の欠如だ。見ていて驚きとか感動を与える工夫に欠く。普通の読者であれば「読んでいてなんの得があるの?」と考え、そういう作品は読まなくなるだろう。残るのはカジュアルな読者か狂気的なアンチだけ。他作品を参考にして映える画面を作ってほしい。

今回は柊を荻が救い、長い回想が終わった。(序)含め6週にわたりお送りされた柊の過去だったが彼女がいじめられて荻が救って終わり。今後の話で松原とか木瀬は登場しないんだろうな。そう思わせる展開とキャラデザであった。

f:id:tits-tits22:20190723212853j:image

新キャラが登場したと思ったが荻の親友の彼だった。かなり久しぶりの登場というか、顔を見せることがほぼなかった彼なのでぽっと出の相棒ポジションだと思ってしまった。名前が出てこない。

f:id:tits-tits22:20190723212936j:image

今週のキメ顔一覧

キャラのキメ顔が多かった。キメ顔が多いと話の支点がどこにあるのかわからない。ぐっとひきつけるシーンあってこそ展開に強弱が出る。それができているだけで話がうまいと言っていい。今週は荻がいじめを阻止する内容だったから「彼女にもう近づくな」のセリフだけ大きく見せ、それ以外は淡々とキャラの表情や場所関係を表しているだけでいい。これに関してあまり多く言及することはないが絵のうまさと違って努力次第で改善できる。

この漫画がそもそも読みにくい理由を考えてみた。フルカラーの縦読み漫画が少ないので参考にする作品をよく知らないが以前ジャンプ+で連載していたコウテイペンギンの漫画は読みやすかった。まずコマ割りが単行本形式に準拠していたためだろう。実際にそのままのコマ割りで単行本も出たし縦にスワイプしながら1ページが画面に収まるようになっていたのが大きい。一般的な漫画だと東京のグールの漫画、帝一が国を築く漫画が特殊なコマ割りをしているが読みにくさは強く感じない。元ある形式をいじった表現技法におさまっているからだ。それに対して「ニュートンの蕾」のコマ割りは線で絵と絵の間を区切っているだけであり伝統的なコマ割りとは一線を画している。他の先進的な縦読み漫画でもスマホ至上の独特なコマ割りを目にするがなんとなく一定の割合で大きくコマの間を空け「1ページ」を意識させるなど読者への配慮が感じられる。本作にはそれがない。これが読みにくさに直結している。初めから読みやすさなど考慮されていない。

f:id:tits-tits22:20190723213037p:image

次にフルカラーなのが読みにくい。色を塗っているだけなら問題ではないが非常に目の疲れる色を採用している。原色や白などの濃い色は目に刺激を与え青や緑、その他淡い色は逆に目を癒す効果があるらしい。玉響は重要でないシーンもやたらと発光させて絵を完成させるため必然的に画面が白くなり目が疲れる。髪の色は淡い色を採用することが多いが主に背景を眩しくする。そしてその背景分でお釣りがくるくらい鬱陶しい。玉響が意識して色使いを変えない限り眩しさに目がやられる問題は解決されないだろう。単純な絵の下手さもあるがそれはあくまで読みにくさには直結しない。

f:id:tits-tits22:20190723213103j:image

アクションが下手。荻が体をひねっている間に気がついたら松原が降参していた。適度にカットを入れるでもなくねっとりじっくりとカメラを動かしているため「意図的にアクションを省いた」のではなく「アクションを描こうとして描けなかった」のがわかり、実力の天井が見えてしまったのが悲しい。荻が格闘技ができるという設定があるのは知らされていなかったがまあ新しいことに挑戦しょうとしたのはよい。そういう狙いはなくノリだけで格闘させた可能性も大いにありうるが。

  • 話のこと

先週までオラオラしてたいじめっ子たちが弱くなりすぎ。

いじめられて泣いた柊のもとに荻とその相棒が現れいじめっ子の木瀬、松原らを撃退したことを思い出した柊はなにかを決意した。

でしょうね。それ以上でもそれ以下でもない感想が浮かんだ。驚くくらいに簡単に荻が柊を助けた。この一連の流れにおかしいことが溢れすぎていて違和感の正体を一瞬煙に巻かれた。全部玉響世界の理屈に則った魔法と言ってしまえば楽なのだがそれはまごうことなき手抜きになるので真剣に今週話を考察する。まず荻がなぜ柊を助けたのか不明。これは最後まで明かされなかった。人を助けるのに理由はいらないというヒーロー理論では片付けられない。というのも彼は去り際に人を助けたことの達成感らしきものも感じていなかったし礼も拒否したように見える。これまでの本編でも人を助けることが当たり前といったような正義漢らしい一面もなく普通の高校生だった。この人物が理由なく柊を助けることにことごとく違和感を覚える。またいじめっ子を指して汚い色と評するがそれに加担した他の生徒は放置しているのだろうか。汚い色をこの世から排除するといったヴィラン理論ならむしろわかりやすいのだがそういう趣向でもなさそう。結局行動原理のわからないキャラになってしまい、そういったキャラの行動に共感はおろかわずかな感情の揺らぎも発生しないことを学んだ。こういう決定的な描写をこれまでに尋常じゃない回数不足させている玉響は漫画というコンテンツで読者を楽しませる職業に向いていない。悲しいけれどこれは断言できる。

相棒の立ち位置の彼も言動が気持ち悪いとかノリを見ていて鳥肌が立つとかいった次元を超えている。なんで生きているのかわからない。せめて彼独自の動作を見せてくれればあの絵にも血が通ったように見えなくもないだろうにその点を玉響は頑なに工夫しない。そもそも問題を抱いていないことが伝わってきた。

回想を通じて柊が決意するだけで終わったのがなんとも言えない。しかもなにを決意したのかわからないのがまた読者をイライラさせる。この茶番に付き合わされた読者にそのリターンが今後与えられることはありうるのだろうか。いやない。

  • 終わりに

重い。21話は読む前から予想できた予定調和に予定調和を重ねたミルフィーユであったため先週話までのように変な部分を笑うことすらできなかった。

また作中で荻を完全無欠の主人公にしたいなら彼以外の人物に欠陥を描かないといけない。主要登場人物がみな揃って(作者にとって)性格のいい姫・王子であるため救いようがないくらい面白くない。回を重ねれば重ねるほどなにをしたい漫画なのか霧の向こうに霞んでいく。連載中の漫画に対して不適切な希望ではあるがあと数週の間に話をたたんでほしい。偽らざる率直な感想にたどり着いてしまった。

 

「ニュートンの蕾」22話感想 - 糊塗日記

↑つぎ