糊塗日記

不定期更新。学生です。

新作「ミュウツーの逆襲EVOLUTION」感想

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久しぶりに劇場で映画を鑑賞したのでその感想を書きたいと思います。新作ですのでネタバレを避けるように慎重に筆を進めます。まだ本作を見ようか迷っている人にとってこの記事が参考となれば幸いです。

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カードと硬いのもらえた。うれしい。

個人的に100点中81点くらいの映画でした。ポケモンの目がキレイだった。

  • はじめに

タイトルから分かる通り本作は「ミュウツーの逆襲」のリメイク作品です。まず大きく違う点としては本作がCG映画であること。ポケモンのゲームソフトで言えば「ルビー・サファイア」と「サン・ムーン」くらい違います。ポケモンが3DCGに移行したタイトルは「ORAS」ですからそれ以降遊び始めた子供達にとってはCGのポケモンの方がドット絵やアニメ絵より馴染みがあるでしょう。筆者は「エメラルド」からのユーザーですのでいまだにCGのポケモンには違和感を覚えます。ジェネレーションギャップです。その点を踏まえて鑑賞してください。少なくとも大人向けの作品ではないということです。

脚本と画面作り、キャラクターの三点に着目して感想を述べていきます。

  • 脚本について

タイトルをまったくひねっていないことから予想できることと思われますが脚本はやはりリメイク元の「ミュウツーの逆襲」をほぼほぼなぞったものでした。

作られた存在である自分自身に疑問を抱き父である研究者たちを焼き払ったミュウツーは自らのベースとなったミュウという幻のポケモンに興味を持ちます。その後強大な力をもって城を築き全国の優秀なポケモントレーナーを招きます。そこにはミュウの姿も。彼らオリジナルとそこから生み出したコピーどちらが強い「本物」であるかを決めるためミュウツーはこれらを戦わせます。

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切ない…。同じ姿のポケモン同士がただ肉弾戦を繰り広げる様は虚しく、見ていられません。

オマージュ部分としてはカントー地方ポケモンのみを登場させたところでしょうか。以前鑑賞した「キミに決めた!」も舞台はカントーでしたがマーシャドーを初めとしてカントー地方以外のポケモンも自然と登場させていました。本作ではキャモメがセリフに出るだけでそれ以外の登場ポケモンは初めの151匹のなかから選出されていました。招かれたトレーナーの手持ちもほぼ変わらずその点では目新しさはありません。

それに反して技関連では「エナジーボール」など新しめのものが採用されていました。個人的にはどちらかに統一してほしかった感があります。古臭いポケモンを使うなら同じく「はっぱカッター」「つるのむち」など古臭い技のみを使い、あくまで画面的にのみ新しさを追求してほしかった。アニメシリーズでカスミやタケシと冒険しているときそういった新しい技は存在しなかったわけですから「これいつの話?」と思わざるを得なかった。

そして鑑賞後それらすべてが些末と感じられるほどに大きな疑問が残りました。

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なぜミュウツーはトレーナーを集めたのか?

自ら招待状を出しながら自身で嵐を作って彼らを試し、それを超えられる強力なトレーナーを招集した理由がいまいちわからない。いくつか考えましたがそれらの可能性が脚本のアラによってことごとく潰されている気がしてならないのです。

・強力なトレーナーの強力なポケモンのコピーを生み出すため

彼らを招待する前からミュウツーは強力なポケモンを従えていたし上記のためであれば劇中で力試しをする必要はなかった。

・強力なポケモンを従える強力なトレーナーを操るため

そのそぶりすらなかった。

・強力なコピーとトレーナーを戦わせるため

そういった態度でもなかった。

・強力なトレーナーを餌にしてミュウの興味を引くため

その描写もなかった

結局ミュウツーの行動が行き当たりばったりでダサくすらあります。「なんだと?」とかどの口が言ってるのか、と。この辺は子供向けということも考慮すれば分かりやすくセリフに起こすべきだったでしょう。さらにいえば最後に至ってもミュウツー自身の「私は誰だ?」の疑問に答えが出ているかどうか、かなり怪しいです。

脚本の総評としては「結末が不確定」の一言に尽きました。リメイク元がそうであったとしても改善すべき事案でした。セリフまわしのテンポの悪さも作品を観た後のもやっとした後味に一役買っていて、どうにかできなかったのかと。

 

「めざせ!ポケモンマスター」を使ったオープニングはなかなかテンポも良くて見応えがありました。

  • 画面作りについて

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CGということもあって立体感、質感、臨場感を出すことにこだわりを感じました。特にポケモンの肌に関してはアップのシーンも多く、制作側の自信が伺えます。

なかでもリザードンの生き物感はダントツでした。首の付け根の鎖骨やリアリティを追求した羽の動き、サトシのリザードン特有の荒々しさも感じさせ得意技の「ちきゅうなげ」が見られた部分にもサービス精神が溢れていて非常に良かった。

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その他のポケモンも出来が良かっただけにやはりトレーナーたちに違和感を覚えずにいられなかった。イラストを3次元に起こすことの難解さは理解していますがやはりいまいちさがあり、アニメで見たいなと思ってしまいます。そんななか女トレーナーは全般可愛く描けていてこだわりを感じました。男トレーナーでいうと、カメックス使いのトレーナーは体格に対し首が細いのが気になりアンバランス。タケシお得意のデレデレシーンも急な表情の変化に堪えず懐かしさやおかしさがある一方絵的な不安さが伴いました。

また本作は一つのシーンをやたらと長く描写する節がありそれが全編を通して散りばめられているため、わずかなシーンごとに飽きがある辛いカメラワークになっていました。絵コンテか脚本どちらかが工夫していればもっと盛り込めるシーンもあったように思います。あれらが単純な尺稼ぎでなかったことを祈ります。

ミュウツーのCGは少し太っているように見えました。首の後ろの管のような部分や触覚っぽいところ、指や足がそれぞれわずかに太く不恰好に感じました。ただ個人的なこだわりに当たる部分ですので鑑賞の邪魔になる範囲ではありません。

演出に目をやるとエスパー能力を使う際に必ず右手を前に出すのが逆にクールさを損なわせていたように感じます。予備動作なくこちらの攻撃を防いでこそ「最強のポケモン」と豪語できるのではないでしょうか。個人的な趣味ですが棒立ちでよかった。

逆に嵐を作り出すときの演出やミュウとのぶつかり合いはCGのよさを前面に出した印象的なシーンでした。かっこよかった。

  • キャラクターについて

おもにサトシ、ミュウ、ミュウツーが印象に残ったキャラクターとなりました。

サトシは映画内でよく動き回り主人公としての役割を十全に果たしたと言えます。わけてもピカチュウに対する愛情がよくアクションに現れていて面白かった。この愛情が一種異常なまでに描かれており「ピカチュウさえよければほかはどうなってもいいサイコパスなやつ」と記憶が塗り替えられかけました。主人公はでしゃばりすぎるくらいがいいと思うので彼の動きには満足しました。ただサトシの動きが作中での基準であるような誤解を抱かせると他のトレーナーの株が相対的に下がり、視聴者としては世界観に没入しづらくなります。その点は一言登場人物に「サトシは異常だ」と呟かせ、作中の基準を少し明示してほしかった。

ミュウに関して一言で言うなら「媚びすぎ」です。可愛さを見せようとしすぎて可愛くなくなるという逆転現象が起こりました。あくまで幻のポケモンとしての神秘性を保ちつつ現象然とした態度でことに臨んでほしかったです。多くのメディアミックスのミュウはこれがうまくいっていたために魅力あり、正体不明の不気味さありのバランスを保っていました。今作ではいちポケモンとして描いてしまったためにそのバランスが崩れ好きになれませんでした。ミュウにはミュウにしかなし得ない特別な立ち位置にいてほしかったと、それだけです。たとえ今作のミュウの立ち位置が空を飛ぶピチューであっても絵的なおかしさはなかったでしょう。それほどに独特の魅力が損なわれているように感じました。ミュウには媚びないでほしい、その一点でした。

ミュウツーは結局何がしたかったのか。オリジナルであるミュウに会いたかったのかコピーポケモンを生み出して世界を蹂躙したかったのか。途中であやふやとなるテーマでしたが彼自身は自身の正体を知ることを目的としていました。「私は誰だ?」が最初のセリフでありサトシやミュウと触れ合ったことで彼自身の答えを見出しひとまず姿を消しました。これは良いのですがいまいち必然のことだったような気がしませんでした。彼が自分から動いたことといえばトレーナーを招待したことだけで、その後の顛末は挑発に乗ったり提案を受け入れたりと他の人物の口添えありきのアクションとなってしまったのが残念です。「自身を知らないこと」は「主体性がないこと」ではありません。もっと強く執拗に「自分の正体」を突き止めるために自分から動くミュウツーが見たいと思いました。よかった点は作られた存在でありながら「自分は最強である」という自負が終始一貫していたことです。その決定された強さが唯一彼を救っていたのでしょう。

  • 終わりに

¥2000の価値はあるのか?

映画館で映画を見るのにも一般料金で約2000円かかる時代となって久しいです。そこで消費者としてシートをとる前に考えるのが2000円払う価値があるのか。あくまで主観による基準なのではっきり言って他人の感想はあまり参考にならないです。

あくまで筆者の主観で言えば2000円の価値はあるように思えませんでした。感覚としては1500円くらいなら元は取れてると思います。筆者は学生料金で見たので元は取れました。

CG映画は家のテレビで見るとどうしてもしょぼく見えてしまいます。スクリーンほどの大きな画面で水しぶきやキラキラのエネルギー弾を見るのがCG映画の楽しみ方として十全のものといえるのではないでしょうか。小林幸子の歌うエンディングも映画館の音響あってこそ感動を味わえたように思います。

結局アラはあったものの楽しめたのは事実でした。ポケモンはなんだかんだ懐かしさもあってポップコーンが美味かった。

料金内訳はCG映画分¥400・エンディング¥500・リザードン¥600でそれ以上はポケモン次回作への寄付と考えれば損はないでしょう。