糊塗日記

不定期更新。学生です。

「ニュートンの蕾」17話感想

集英社公式アプリ少年ジャンプ+にて毎週火曜日更新の絵日記「ニュートンの蕾」17話さざ波とアステール(1)の感想をトレス屋・玉響しゆに敬意を払いつつ書いていく。

「ニュートンの蕾」16話感想 - 糊塗日記←前です

f:id:tits-tits22:20190625160913p:image

いやお前は色違いの荻だ

  • 絵のこと

初っ端柊のでかい顔が見せつけられる。眉毛の位置が骨格に沿っていなくてやけに離れている。そのためか表情が読めない。その次のコマの端に「→山田」の注釈があるがどうみてもカーテン。この後山田なるキャラクターの顔が描かれることはない。ひと一人の顔を描くことがそんなに難しいのだろうか。最近に限った話ではないが玉響の描く絵がいろいろな作品のトレースをしているのではないかとの疑惑がある。玉響の絵と該当する絵を重ねると顔のパーツや身体の輪郭がぴたりと一致するといったことからこうした疑惑がわくのだろう。ポーズを真似たり模写したりであればまだリスペクトの念を感じられるのだがトレースとなるとちょっとわけが違うと思う。そうして描いた絵は自分の作品ではなくなるし元の絵を描いた作者にも失礼な行為に当たる。漫画の新人賞に輝いた作品が多作品をトレースしていることが発覚し賞を取り下げられた事例もある。ちなみにその作品は全体の8割近くをトレースしていたらしい。他人の線をなぞった絵は自分の作品にはならない。最近はめっきりこういう話も聞かなかったのだが久し振りに耳にすると悲しい。事実であるならば頑張って自分で絵を描いて欲しい。

今回の話なのだが描き文字がひどい。読者がフキダシ外の文字まで読んでくれる前提で漫画を描いているのが傲慢さを感じさせる。うまい漫画家の描き文字は読んだら面白いが読まなくても話の大筋には全く問題ないバランスを保っている。またギャグとかそれ未満の範疇に抑えているのが好ましい。この作品の描き文字はその範疇を逸脱していて読んでいて妙な気分になる。冒頭のシーンは3人の女子生徒がおそらく体育の授業中に談笑している図である。三者三様といった感じで性格の違いを見せようとしているのだが体操服の着方もバラバラにした方が絵に彩りが出るし性格の内面も見えてくる。工夫が足りない。赤ちゃんの描き方が相変わらず下手くそ。大きさのバランズが悪いと思う。柊の抱える赤ん坊の頭よりはるかに柊の頭の方がでかくリアリティがわかない。アタリをつけて描けばこういう事態は避けられるだろう。気をつけてほしい。母親の服装もカーテンを身体に巻きつけているようで難解。ショールを描きたかったのかもしれないが、だとしたら肩のちょっと下ぐらいに巻きつければマシに見えた。柊が栖蘭学園の説明会パンフレットを読んでいる。描き文字で誤字がある。パンフの表紙ももうちょっと工夫を懲らせなかったものか。灰色一色に描き文字か…。玉響の家にはパンフレットを置いていないのだろうか。またこのシーンは引越し後の柊の部屋であろうことから背景を描くべきだった。ダンボールの積み重なった部屋をすこし映すだけで雰囲気が見せられただろう。この後雨が降り柊が憂いているシーン。窓の外の塗り方があまりに平面的で立体感を感じられない。影のつき方も光源の位置がめちゃくちゃになっている。雨が降っているなら画面全体を暗くしてみるのもよかった。フルカラー漫画なのにそういう着眼点がないように感じられる。柊のカバン、ポケットが付いてたり付いてなかったりする。新登場の男子が傘を柊に差し出すシーン。拳の形が変。二人の視線もちょっとすれ違っていて不可解な絵となっている。柊が男子の名前を訊くシーン。ずっとキャラクターが右向きで話していたのに急に左向きになるからバランスが悪くなる。変な表情。男子が松原桂と名乗る。とうとう人物の輪郭まで不可思議になった。顔のパーツを手癖で描いて身体とのつき方やサイズのバランスがめちゃくちゃになっているのが一目見てわかるほどにおかしい。大ゴマだからより印象的に目に焼きつく。その後の柊の表情も何を考えているのかわからない。同じクラスの男子が他の女子を無視していきなり自分に話しかけてきたのだから無理もないだろうが彼女が考えていたのは折り畳み傘についてだった。後日昇降口で松原を発見し傘を返そうとする柊。すぐそばで見つけた割には声をかけたのがずいぶん後になり息切れを起こしている。いちいち読者の混乱を招くコマ割りである。松原がイヤホンをしていて気づかなかったのかと思いきやそんなことはなく普通に歩くのが早かっただけかもしれない。松原の顔のパーツもいまいち安定しない。登場するごとに別人のように見えるしそもそもこいつ荻に似てる。傘を返した後松原が雨の日は予知できることを描き文字で説明する。人の感情が色として見えるとかよりよっぽど役に立ちそうな能力だ。この松原、登場するとき肩にかけるタイプの学生カバンを必ず背中に背負っていて笑いを誘う。柊を見据える二人のキャラクター登場。このシーンの背景はほんとひどい。直線ツールで描いたのだろう。パースの概念が玉響世界にはないことがこのコマで確定した。ピンク色の髪のツインテールもぺちゃんこでちょっと面白い。

  • 話のこと

今回は特にこれがひどい。前回の導入から順調に柊の回想へと移行したストーリー。中学の頃は学校でもバンダナみたいなやつをつけていた柊だが高校に進学してからつけなくなる。キャラ付けをやめた子どもっぽくていい。柊は恋について無知でそのことを同級生に小突かれると「へ?」ととぼけた表情を見せる。この表情がツッコミ待ちみたいでどうも変な感触がある。純粋というより純粋に見せようとする底意地の悪さが印象付けられた。この辺を自然と見せられるようにしてほしい。序盤の台詞回しも普通に読みづらく何回か読み直したがまだ会話が噛み合っている気がしない。入学して早々に雨のシーン。他にも急の雨に困っている女子はいるような描写をしているが傘を貸す松原は一直線に柊の元へ現れる。柊も周りの生徒を気にかける様子もない。舞台稽古みたいな印象を受ける。舞台には二人以外の登場人物は存在せず会話も二人の中の情報だけで完結する。かといってモブが登場するとやたらと会話に入ってきてうざいので玉響は人物間の距離感をいまいち測りかねている。「これ使いなよ」と傘を差し出すシーンも大ゴマを割くような場面には見えない。出会いを演出するならコマの大きさでなく脚本で見せてほしい。この後の傘を受け取れないよとする柊のセリフがやたらと説明口調。二、三語まとめられなかったものか。この辺りのコマ割りはやたらとゆっくり時間をかけており意味深なようでいて画面以上の情報は盛り込まれていない作動しない罠みたいな珍妙さがある。松原の次のセリフは「同じクラスの松原桂」だった。名前を訊いただけなのにそれ以上の返答をしようとするのはおかしく感じるが玉響世界では常識である。この次に会ったとき柊は松原に傘と一緒に焼いてきたクッキーを渡す。前から不思議だったのだが女子はどうしてクッキーを焼くのだろう。またそれを感謝の意と共に渡そうとするのだろうか。しかも大抵あんまり美味しくない。水分が多かったり砂糖が少なかったりして口の中が変な匂いで満たされる。私事で恐縮だが最近寮内のキッチンでクッキーを焼いたバカがいたらしく寮内がむせかえるような甘い匂いで満たされた。それでいて悪いことをした意識が本人にないらしく嫌になる。感想に戻るがその辺り価値観の相違がありどうも楽しめない。柊が松原に傘をなぜ二本持っているのか訪ねる。松原は何を勘違いしたのか自分の傘事情を自慢げに話し始める。どうも会話が噛み合ってない感じがするが玉響世界では日常茶飯事なのでスルーする。柊は高校で吹奏楽部に入っていた。そうか。廊下にロッカーがありその影に二人の女子生徒が柊を睨むように佇んでいる。この漫画縦スクロールなのでまずこの二人が視界に入ってから不思議な面持ちをした柊が目に映ることになる。この辺りのカメラワーク、不穏な二人が急に現れて驚きを与えるように演出できなかったものか。またこの二人なのだが片方が茶髪である。玉響世界で茶髪の女子の存在が許されないのは常識なので殺伐とした世界観なら次の話で急に死んでもおかしくなかった。

またそれと行動を共にしているピンクのツインテールも大した小物感を放っている。キャラデザから印象が9割方定まるあたり自分も随分この漫画を読み慣れてきたものである。

  • 終わりに

主人公の介入しないサイドストーリーみたいなのが始まった。似たようなのだと浅野いにお花沢健吾がよくこういう展開をやると記憶している。彼らの作品ではそれを面白く活用していたのでうまくやっていたのだなと思う。こうして別の作品でそういう展開の真似事をみるとより強くそう思う。そういう展開が許されるのは技術ある漫画家だけなのだなと勉強させられた。デデデデの新刊をまだ買っていないことを思い出した。通販で買わなくてはならない。近くに本屋がないのがうらめしい。

 

「ニュートンの蕾」18話感想前編 - 糊塗日記←次です