糊塗日記

不定期更新。学生です。

「ニュートンの蕾」14話感想

集英社公式アプリ少年ジャンプ+にて毎週火曜日更新色盲患者保護コメディ「ニュートンの蕾」の感想を作者・玉響しゆに敬意を払いつつ書いていく。

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「頭が良い人の」という部分がいらない

  • 絵のこと

絵に関する細かいミスはこの漫画では鳥が空を飛ぶのと同じくらい当たり前の事態なので揚げ足をとるようになってしまうがそれでも漫画を読む立場として無視するわけにはいかない。そのため一つ一つの過失をあげつらっていく。

先週腰を曲げたポーズで「ちょっといい?」と言い週をまたいだヒロイン・橘。腰を曲げたときの頭の位置と立っているときの頭の位置が変わらない。そもそも腰を曲げて質問をするポーズがきついのにこういうミスは控えてほしい。足だけの構図もパースがすこし怪しい。足が下手な漫画家は珍しくないがパースがバラついているのはそれ以前の問題。どの位置からカメラが捉えているのか理解してほしい。主人公・荻の靴の位置がこんなにのっぺりしているわけないのだ。今回はサブタイトルの背景が珍しくお馴染みの青空素材ではなかった。黄色と桃色と橙色が渦を巻いているような模様。サブタイトルの「黄昏時の水溜まり」に沿った工夫なのだろうか。こういう気遣いはいいと思う。色は直感的に話の展開を予測させる働きがある。今回はいつもとすこし違うよという意味合いを持たせているのかもしれない。

いつも平坦な絵作りを心がける玉響だが二人の普通の会話シーンを斜めにすることで動きを見せようとしている。演出自体は悪くないのだが会話の内容があまりにもどうでもいいため画面作りと話が噛み合わずアンバランス。という感じでどうでもいい会話を斜めにする割に話の最後、橘が色を失うシーンでは特に工夫もないのでノリでネームを描いているのかもしれない。

いつも通り書き文字が散らばっていて見づらいが今週はすこし控えめに感じられた。「即答。」みたいな書き文字は何を意図したものかわからないが細い字で主張し過ぎない分にはまあいい。

この漫画は意味のない直線を画面に引く癖みたいなものがある。場面展開の合図に近い意図を持っているのだろうがもっとやり方があるだろう。直線はメタすぎて読者を混乱させる。効果線というには手がかからなさすぎるためだ。

二人で公園まで歩いて「ふ〜!歩いたねぇ」というセリフ。「ふ〜!」はため息混じりに疲労を表しているのだろう。しかしテンションが高い。「!」はいらなかったのでは。セリフを考える立場では一つ一つのニュアンスを大切にする。「ふ〜!」ひとつにも「ふう」「ふぅ」「ふぅ…」「ふー」などで感じ方が変わるだろう。その中でも「ふ〜!」は最も適切でないひとつだと思う。主観によるのだが、すこし気になった。

この場面で手に持っているスタバで買った麦茶のような飲み物。疲れたのならスタバで休めばよいのでは。歩いた感を出したいならペットボトル飲料でも持たせればそれっぽくなるだろう。やたらとおしゃれっぽさを押し出そうとする姿勢が好ましくない。玉響の中では飲み物といえばスタバなのか。

橘がベンチに座るシーン。彼女が気持ちよさそうに腕を伸ばしているのだがやはり格好が痴女っぽい。脇は出しているし胸は強調しているし下半身は作業着みたいだ。サスペンダーはでかい乳房の乳首の上を通過している。なんかいやだ。上に一枚羽織ればまだ見れるのだがだめなのか。サマーニットはOKでカーディガンはなぜNGなのか。あと荻は何枚重ね着してるんだ。暑そう。

二人でベンチに座る。「なんか…落ち着いちゃったな…(そわ…)」とする荻。そわ…とするな。橘に危害を加えようとしているように見える。一体どういう意図の効果音なのかわからない。あとこの後の彼の!が骨みたい。

この二人三つ並んだベンチの真ん中に腰掛けている。次に来た人が座りにくいとか考えないのだろうか。端っこに座るのは日本の文化だが後から来る人を重んじる気遣いでもあるだろう。端に座ってほしい。

この後荻の寝不足がたたって寝落ちする。起きると生垣そばのベンチから公衆便所のような場所に背景が変わっている。怖い。何か途中で見落としたのかと思ったがそういうわけでもなかった。描写がいちいち読者の混乱を招く。招かないでほしい。

  • 話のこと

今回はこれが特にひどい。序盤は先週からの引きから始まる。ちょっといい?と橘が聞くのだがその内容が荻の寝不足に関すること。荻のことを本当に気遣っているのなら会ってすぐに言え。そして今日は体調も悪そうだしまた今度にしよっか、が本当の気遣いではないだろうか。顔色が悪いのに一緒に歩かせるのはどうかと思う。睡眠不足はお肌に悪いと橘は言うが個人的にはもうすこし他人の健康に無関心な女性が好き。橘はお節介というより出しゃばりすぎな印象を受ける。セリフの機微によるものだろう。荻は彼女の説得に身長か…と神妙そうな表情を見せる。今の身長差も捨てがたいけどあと4センチは欲しいな…と考えていたらしい。気持ち悪い。気持ち悪い。身長差を真剣に考える男子の様がこんなにも生理的嫌悪を刺激するものとはついぞ知らなかった。新たな発見を得たことは学びだが肝心なことに男子は女子との身長差にそんなに熱心にはならない。高い身長は欲しいがわざわざ彼女の頭の位置がどうとか考えるのはかなりやばいと思う。

二人は午前中に待ち合わせ夕方になるまで絵を描こうとした描写がない。絵を描くなら、ましてや背景画なら日中に描くのが賢明ではないだろうか。描写していないだけならそれはすこし間違っている。荻はいい背景を描かせるために橘をデートに誘ったのだから絵を描く描写をすこしでも怠るのは問題だろう。間違ってもぶらぶらとどこかを散策するために荻は彼女を誘ったのではないのだから。そもそも二人がどこをほっつき歩いていたのか不明だからこのデートはなんなのか伝わらないけれど。

荻の共感覚について橘が興味を示す。心を読めるのかと誤解するシーンで彼女が身震いをしている。荻に見られたくない汚点を彼女は持っているのかもしれない。荻は「表情から気持ちを推測できることとほぼ同じ」と作中で話している。それ共感覚と言えるものなの?いまのところ荻が一般人と違う点が作中で描写されていない。共感覚を活かして物事を解決したシーンもないしそれによってリスクを負ったこともない。共感覚の説明に関してもなにかだらだら言った風で中身はない。色が見える気がしているだけですべて荻の勘違いだとしても物語上齟齬がないのだ。作品の大きなテーマだろうにこれでよいのか。

橘が完璧な美少女であるならばやはり他人に自分の悩みを打ち明かすべきではなかった。完璧な美少女はどんな困難にも他人を巻き込むことはない。自分の中で解決しようとし、被害を抑えることを最優先する。それに反して橘は病気のことはペラペラ喋るし将来に向けて絵を描いていることまで明かしている。それも会って数日の異性だ。今回の最後に彼女の目に黄色が見えなくなったらしいが「ふーん」としか思わなかった。すぐに荻に打ち明けるのではなく彼女の苦痛を押し殺すような表情に荻が気づきまさか…!というぐらいの起伏ある展開がほしい。今日寝不足でしょ?と同じようなトーンで色を失ったことを告白されても困るという話。そもそも色を失う病気を患っていることを自覚しているのだからそれくらい前もって覚悟しておくのが漫画のキャラクターとして求められる理想像ではないだろうか。

  • 終わりに

少ない需要だが呼んでくれている人がいないわけではないのでこれからもつらつらと感想を書いていきたいです。今回は更新が遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした。

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