糊塗日記

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「ニュートンの蕾」9話感想

集英社公式アプリ「少年ジャンプ+」にて毎週火曜日更新「ニュートンの蕾」最新9話の感想。

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主人公がふたりいるように見えるシーン

  • 絵のこと

本作の感想記事を書くにあたり作者・玉響しゆ(たまゆら・しゆ)の前作、comicoにて連載していた「蒼穹のフォルテ」全話に目を通した。あえて読んだという表現を避けるのは画面やセリフをどうしても上滑りしてしまい内容が頭に入らなかったためだ。作中ではどうやら戦争を軸に話が展開していたのだがいつ、なぜ始まってどのように終結したのかが描かれず画面には主人公、ヒロインの仲睦まじい様子が描かれているのみだった。それはひとまずいいとして前作で指摘されていたのがキャラクターの見分けがつかないという点。血縁があるとはいえ主人公と髪の色の違うだけのキャラクターがいて読者を大いに混乱させていた。

作者・玉響はその点を問題視していないらしく今作でも主人公とその他の人物の描き分けをしない。これによって今週混乱するシーンがあった。読み進めると主人公・荻が気軽にヒロイン・橘に話しかけられないことを憂うシーンだとわかるのだが、一瞬荻が橘に話しかけるシーンを夢想しているように見える。コマ割りの工夫次第で読者をつまづかせることのないようにできるはずなのだからその努力を惜しまないでほしい。

さらに描き分けの話を加えると荻とその親友・榊との見分けも怪しい。メインカラーが違うのでわからないでもないのだが髪の長さや輪郭もまったく同じ二人を差別化しているのが前髪だけでは今後演出上かならずややこしくなると思われる。フルカラー作品なのだからトーンや大胆なベタを用いたモノクロとは違う手法を用いることができるのにキャラの顔が大体同じなのではその幅を確実に狭めている。

いまのところ女性はいいとして男性は中性的な、あるいはいっそ女性的にも見える骨格しかしていないため、いまからでもそのあたりに配慮しつつ絵を変えていくべきではないだろうか。

あと荻が橘と偶然会ったシーン。場所がわからない。

  • 話のこと

起伏がない。盛り上がりどころに欠け、スクロールする指の引っかかるところが怪しい作画部分以外に存在しない。

今週のテーマは「人間関係に難あり荻、橘に連絡先を訊く!」なのだが荻はなんとしても橘の連絡先を訊きたいはずなのにそのために勇気を出している様子がない。彼は帰宅途中に橘と遭遇したのだがそれは偶然である。彼女がそのときひとりでいたのも偶然である。先に声をかけたのは荻からではなく橘からである。橘がもし診療日かなにかで早々に帰っていたら荻はなんということもなく直帰していたであろう淡白さが伺える。橘との遭遇後、彼女に連絡先を訊く際にはゴクリと勇気を振り絞ったような表情をするがその段階に至るまでの偶然ありきである。本当に橘の連絡先が欲しいのか怪しい。その証拠に、榊からの「連絡してみろ」という提案にひどく動揺している。連絡先を訊くという行動自体が目的になっておりそれをどのように活用するか、自分で考えようとする知力が決定的に欠けている。荻が誰に認めて欲しくて本当はなにがしたいのかわからず、なぜ行動を起こすのか彼自身が深く考えたことはあるのだろうか。荻とは人間の形を模したホムンクルスであり榊の命令通りに動く傀儡なのかもしれない。

あと橘の忘れた色鉛筆を荻が渡したシーン。わざわざ「黄色の色鉛筆」とセリフに起こす必要がない。また橘も「探していたの!」と言う割には探していた様子がない。先日二人きりでいた荻に色鉛筆のことも訊けないほど彼女の日常は忙しかったのか。

  • おわりに

少女漫画の勉強のつもりでこの漫画を読む決意をした自分は少女漫画を過小評価していた。おそらく並の少女漫画でもここまで起伏なく進展なく道理なく努力もない内容ではないだろう。まだ9話でこの決意をするのには勇気がいるが「蒼穹のフォルテ」を見、玉響の予備知識を覚えたうえでこれを単に少女漫画とはいえない。

自ら好んでゲテモノを食す趣味はないのだがあえてクソ漫画の勉強のつもりで「ニュートンの蕾」をこれからも読み進めていく。

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